会社の価値が思ったより低い?その原因はガバナンスにあり!

「会社を売却したい」「ベンチャーキャピタル(VC)や投資家から資金調達をしたい」「上場したい」。会社が転換を迎えるとき、このような二―ズは少なからず出てきます。しかし事前に対策をしていなければ、育て上げた会社の価値が過小評価されてしまうリスクがあることをご存じでしょうか?

今回は会社の価値を過小評価されないためのポイントを整理します。

目次

  1. 自慢の会社が買い叩かれてしまった!その原因は?
  2. 決算ガバナンスのポイント①: 早期化
  3. 決算ガバナンスのポイント②: 締め処理
  4. まとめ

自慢の会社が買い叩かれてしまった!その原因は?

会社のビジネスモデルを投資家に評価してもらい、資金調達を受けることになった社長のAさん、いざ交渉が終わってみると株価が思ったよりも低く評価され、期待していたほどの資金調達が受けられませんでした。事前の面談ではあれほどビジネスを評価してもらっていたのになぜでしょうか。

資金を調達するにせよ、会社を売却するにせよ、経営者が会社の将来ビジョンやビジネスモデルを、熱意をもって伝えることは重要です。しかし、それだけで会社の評価は決まりません。会社の価値を決める交渉では「会社の組織としての仕組みが整備されているか(ガバナンス)」も大きく影響します。


例えば、決算作業が年一回になっている会社を考えてみましょう。資金調達の場合、投資家は、毎月早い段階で月次の決算報告を受けられることを期待しています。そのため、決算作業が年一回の会社は、今後月次決算体制を整えるコストがかかってくることになり、株価の押し下げ材料になります。もっと悪いと、経営管理ができていない会社という印象を与えてしまい、どんなにビジネスが優れていたとしても値下げ交渉の材料を与えてしまうことになります。

このような事態を招かないために、決算の観点からガバナンス強化のポイントを2つご紹介します。

決算ガバナンスのポイント①: 早期化

まず一つ目のポイントは決算の「早期化」です。

決算の主な目的は①経営者が自社の状況を把握し、次のアクションを考えること(自社利用目的)、②投資家や金融機関などの社外関係者に、自社の状況を伝えること(対話目的)です。
会社の経営は日々行われ、経営を取り巻く環境も目まぐるしく変化しますから、1日でも早く会社の状況を把握する仕組みとして、月次決算の早期化が重要になります。

ではどのように早期化すればよいでしょうか。例えば以下のような手法が考えられます。

  • 口座やクレジットカードを会計システムと連動させて、自動化を進める
  • 日々の支払いを口座引き落としやクレジット支払にするように業務を再整理する
  • マニュアルを整理し、職員の急な入退社があった場合にも業務の引きつぎをしやすくする

実際にどのような手法により早期化を達成するかは、自社の抱えた課題を洗い出し、それを解決する対応を行う必要があります。
課題の洗い出しや対応案の策定・実行が難しい場合には当事務所でもご支援いたしますのでご相談ください。

決算ガバナンスのポイント②: 締め処理

Aさんはポイント①に沿って、月次決算の早期化を実現し、翌月10営業日までに月次決算ができるようになりました。そのため、投資家にもその月のうちに説明をすることができ、高評価をもらうことができました。


その翌月も、その決算に基づき投資家に早期に説明することができました。すると投資家から質問を受けました。
「前月の利益がひと月前に報告してもらった数字と変わっているのですが、何がありましたか?」。


Aさんは答えることができませんでした。すると、「前月は報告してもらった数値に基づいて議論したのに、数字が変わってしまったのでは意味がない、時間を返してほしい」と、辛口コメントをいただいてしまいました。


説明会後、Aさんは経理担当者に質問したところ「新しい取引先の売上を入れ漏れていたので、前月の数字をさかのぼって修正しました」という報告を受けました。
いったい何が問題だったのでしょうか。

問題の一つとして「月次決算の締め処理」をしていないことが考えられます。



月次決算の締め処理とは「月次決算を確定し、修正できないようにすること」をさします。これによってはじめて決算を確定したものとして扱うことができ、決算をもとにした議論ができるようになります


具体的はどのようにしたらいいでしょうか。これは2段階でのガバナンス構築がポイントです。

第一段階として会計システム上で締め処理を行い、締め処理後の修正ができないようにします。そのため会計システム選定の際には、「締め処理を行えるかどうか」がポイントになります。システム上「締め処理」という言葉があっても、修正ができてしまう場合には締め処理の目的を果たせない点はご留意ください。その場合には会計システムの変更も選択肢に含めて検討する必要があります。


第二段階として、承認プロセスを整備します。締め作業の実施前や、やむを得ず締め状態を解除し修正する前に、経理担当者が上位者などの許可を得ることです。これにより月次決算の信頼性をさらに高めることができます。
承認の方法はメールやExcel記録などの簡易的なものから、システムを導入することも考えられます。最低限、①承認の記録が残ること、②作業者と承認者は別の者が担当する、の2点は確保するとよいでしょう。

まとめ

「会社の売却」や「資金の調達」など、会社の価値評価が必要になるタイミングは突然やってきます。その時に本来のビジネスの価値が優れているのにも関わらず、会社の仕組みが整っていないことは、値下げ交渉の余地を与えてしまいます。
月次決算をはじめとしたガバナンス構築はいつからでも始められる一方で時間のかかることです。

早いタイミングから着手し、将来の価値評価に備えられることをお勧めいたします。
ガバナンス構築に関してお悩みやご質問がございましたら、お気軽にお問合せください。